平成12年度現在、日本の医療費は30兆円を超え、対GDP比は近年急速に高まっている。日本の医療は基本的には社会保険システムに基づいて運営されているが、高齢者医療を中心として保険料収入以外に税を財源とする部分もかなり大きくなっており、税を財源とする狭義の財政と医療問題とは密接に関わってくる。本研究の目的は、今後もさらに拡大すると予想される医療費とそれへの財政負担に対してどのように対応していくことが望ましいかを分析することである。 そこで、まず本年度は現状把握に努めるとともに、財源に税を充当するウエイトの大きい高齢者医療に焦点を当ててアンケートを実施した。アンケートでは、現状の医療費負担は「生活を圧迫するほど重い」との回答が約1割、「生活を圧迫するほどではないが、負担は重い」が約4割、等々という結果が得られた。今後は、直接受診する者への自己負担、税での負担、さらには保険制度を通じた負担のバランスをどのように確立していくかが大きな課題である。また、とりわけ高齢者医療への対応としてはコストの高い医療行為から、予防や相談といったかたちでの公的部門の関わりが重要であると言える。 平成15年中に実施した具体的な研究実績は以下の通りである。 1.資料、文献及びヒヤリングによって財政と医療の関わりを分析 2.高齢者医療に関するアンケートを実施 231名の高齢者に対して、医療機関の利用頻度、医療に関する負担等についてのアンケート調査を実施して、基礎的な集計を行った。 3.成果を論文等にまとまるための、分析結果の整理等を実施した。
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