研究概要 |
本研究では、日本の医療費の動向と医療改革の経緯、OECDの統計に基づく国際比較を見た後、高齢者を対象として行ったアンケート調査の結果も参考にしながら、高齢者医療費の抑制と適切な財源確保のありかたについて検討する。2002年度の国民医療費は28兆円で国民所得に対する比率は7.9%となっている。この20年間国民所得にはほとんど拡大が見られなかったのに対して、国民医療費は28%増加しており、その結果、国民所得比が上昇してきている。そして、その主な要因は高齢者の増加に伴う、高齢者医療費の拡大である。 本研究を通じて、これからの高齢者医療を支えるための方策を検討した。アンケートの結果からは、現状での高齢者医療の実態についてその一端を見ることができた。医療費支出については1カ月当たり5,000円未満の高齢者が多かったが、負担感という意味では、半数以上の人が「重い」と答えている。高齢者層の人が何らかの健康不安を抱えていることは確かであるから、そのためのケアが求められることは当然である。しかし、その需要は必ずしも医療である必要はなく、むしろ楽しみも得られるような施設の活用とその場での健康相談等の実施によっても対応が可能な部分も多いのではないかと思われる。少子化が進むことで不要になる施設、あるいは地域の共同施設等、新たに整備・建設を伴わなくても利用可能な施設を最大限活用してこれに当たればそのためのコストの肥大化は抑制できる。そしてそれが医療費の抑制にも結びつけることができると期待される。 一方で、必要な医療はこれからも維持していかなければならない。そのコストの財源としては、広く高齢者も含めた収入ベースでの課税など目的税的な財源を確立し、高齢者の医療需要(コスト)に応じて税率を設定するのが望ましい。当然、特にフローベースでは現役世代のほうが多くの課税ベースを有することになるが、むしろ高齢者にも制度を支える側に参加してもらうことで、受益と負担の明確化が進み、制度維持に対する理解も高まることが期待される。
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