「ドイツ・ベルリン圏における都市化と農村社会の相関」をテーマとする本研究にあっては、世襲財産(Fideikommiss)に象徴される大土地所有への年来の着目を継続しながら、一転、農村から都市へと視点を移し、「都市と農村のあいだ」と言うべきヨーロッパ社会経済史研究史上の新生面の開拓を展望した。都市と農村の立体的関係は、ベルリン近郊テルトウ郡(Kreis Teltow)等のいわゆる「都市近郊農村」(Vorortgemeinde)の実態にあまりにも明らかなのである。 四年間にわたった当該の研究のおもな成果は、およそ以下のとおりである。(1)図書館調査を中心とする資料・文献の整備については、とりわけ「ベルリン圏・都市近郊農村の現代史」に着目して、マッツァラートのナチズム論、あるいは、ヒンツェのプロイセン自治体史論等の基本文献の収集と整理に努めた。(2)研究発表としては、平成17年9月15日、Urbanisierung und die Vorortgemeinde unter besonderer Berucksichtigung des Kreises Teltow um Berlinと題する研究報告を、「アイヒシュテット・カトリック大学」主催の「日独経済史家第3回シンポジウム」において行った。(3)学術論文の主要な成果は、「近世ドイツにおけるクライス制の展開」ならびに「近世ドイツ東部定住地耕区の諸類型」の両論考である。(4)研究成果の公表を目的として、さらに、平成17年2月、『ドイツ都市近郊農村史研究-「都市史と農村史のあいだ」序説』を出版した。本書は、当該の成果の到達点と水準を示す当面の総括にほかならないが、同時に、本研究を踏まえて、次の新たなステップに進むために「必要な通過点」を指示する作品でもある。
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