研究概要 |
平成16年度においては,戦時統制下の石鹸配給システムおよび終戦後の石鹸配給統制の実態などについて,実証的な分析を進めることができた。本年度の調査・研究によって明らかにされた諸点は,次の通りである。 第一に,1940(昭和15)年頃から,石鹸配給統制機構の確立を目的に,商工省,石鹸製造業者,石鹸元売業者(卸売業者)によって検討が重ねられたが,元売・購買・製造を一体化した配給組織の設立を企図する商工省,既存の配給機構を尊重すべきと主張する卸業者および製造業者の間でさまざまな議論が展開され,収斂にいたるまで時間を要したことである。 第二に,結局,その配給統制機能を担う中央組織として設立された日本石鹸配給統制株式会社は,製造業者の販売機能と元売業者の卸機能を吸収することとなり,その株式の7割を製造業者,3割を卸業者が引き受けることとなったことである。また,これに先立って設立されていたメーカーの販売会社(卸機能)も,この中央組織に統合された。 第三に,日本石鹸配給統制株式会社は,その後,合併によって,石鹸を含む製品の配給統制機関に転じていったが,戦時中の石鹸配給統制のシステムは,1949年の「石鹸配給規則」施行直前まで継続されていたことである。 第四に,「石鹸配給規則」による予約クーポンの集券をめぐって,小売店,卸店,製造業者の各レベルのなかでの競争,そして各レベル間で個別主体間の連携をともなう激しい競争が展開され,流通の垂直的な連携や統合の重要性が再認識されるにいったことである。
|