本年度の研究は、ほぼ当初の計画通りに遂行することができた。その概要を示せば次のようであった。 (1)当研究に関する近年の研究成果のサーベイ 本年度は、企業の人事管理・労務管理に大きな影響を与えた社会保障制度の変遷に力点をおいてサーベイを行った。サーベイの結果、小林清一、新井光吉の両氏の研究が当研究の周辺状況を知る上で重要な研究であることが分かった。 (2)ハグレー博物館・図書館におけるデュポン社およびGM社の人事部創設に関する経営資料の探索 i)デュポン社の人事部創設に関する経営資料として、第1次大戦直前の段階でブルーカラー労働者の昇進階梯の整備を目指した社内論議があったことを示すレポートを見出すことができた。これは、デュポン社の社内で種々の経営問題を議論する場として発展してきた監督者会議におけるレポートである。 ii)GM社の人事部創設に関する経営資料については、期待した成果を得ることができなかった。GM社の全体的な動向を示す経営資料はあったが、人事部形成にかかわる動向を示す資料は見出すことができなかった。 (3)これまでに入手した資料の分析と研究成果の発表 当初の予定では、昨年度の調査で入手したデュポン社の会社組織図とその説明書を分析し、その成果をペーパー化するつもりであった。しかしながら今年度の調査で、上述のブルーカラー労働者の昇進階梯確立にかかわる資料を見出した。こちらの方が、人事部確立以前であり、時期的に早いので、資料の分析と成果のペーパー化はこちらを優先した。
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