本年度は、本研究の最終年度に当り、これまで成果のまとめを行った。本研究では当初から基本的に次ぎの2点にかんして作業を進めてきた。 第1点は、内外の研究史を踏まえて、サウサンプトン市の史料に基づき世帯構造の像を描くこと。 第2点は、その基礎史料であるサウサンプトン市の史料を収集整理しデータベースの形にすること。 そこでこの2点にかんして、本年度の実績を述べると以下のとおり。 第1点にかんしては、既に昨年度『近世イギリス家族史』として基本的成果を発表した。本年度は、その補足と改良のため、いくつかの論点を加えた。その主なものとしては、サウサンプトン市内外の移動と疾病の関係など新たな問題をサウサンプトン市にかんして考察したことと、サウサンプトン市の結果を一般化するためいくつかの地方都市の史料の収集と分析を行った。その成果は近く英文の論文として公表するため準備中である。 第2点にかんしては、主用史料であるサウサンプトン市の結婚税のデータベース化を行った。すでにサウサンプトン市の一部のデータベースは公表してきたが、本年ようやくサウサンプトン市の全体に関するデータベースを作成した。公表に際しては、イギリス人研究者の協力も得て、英文の形とし、内外で利用可能であると共に検証可能な形になるよう努めた。またその過程で従来一般に使われていたサウサンプトン市立文書館作成のインデックスにはいくつかの重要な欠落があることも確認された。
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