1990年代のビジネス・リストラクチャリングに関して、日本・アメリカともに、「選択と集中」という特徴が見出せる。日本企業は長期指向といわれてきたが、1990年代のビジネス・リストラクチャリングにおいては、短期指向の企業も存在した。日本企業のビジネス・リストラクチャリングは、本業とは関連性の低い多角化からの撤退が顕著であった。 しかし雇用に関しては、日米間の違いがはっきりしている。アメリカでは従来どおり、レイオフ・解雇が顕著であった。組合員ブルーカラーは、先任権のルールに基づきレイオフが行われた。非組合員ホワイトカラーに関しては、会社にとって必要な人材は、社内人材公募制度などにより社内に留まることができたが、必要とされない人材は解雇された。その際、組合員に適用されたような先任権ルールは用いられなかった。 日本の雇用に関しては、リストラクチャリング時にも、解雇ではなく出向・転籍・希望退職・社内異動がしばしば用いられた。従来は関連会社への出向・転籍が多かったが、1990年代においては非関連企業への出向・転籍が顕著な企業も見出された。また、職場全体が異動するなど集団的異動が行われた。社内人材公募制度も導入されたが、主にホワイトカラーのエンジニアを対象とし、限定的な活用であった。 1990年代のリストラクチャリング時においても、日本は安定雇用のもとでの経営側主導の管理、アメリカは非安定雇用下での個人の選択が対比される。
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