研究概要 |
今回の成果は、次の2つの視点に基づいて行われた研究によるものである。1つは,モスクワ等のヨーロッパロシアではなく、ロシア極東を対象としたこと。2つ目は、産業と生活の基盤でありながら、ロシアのエネルギー問題に対する研究においてこれまで扱われることが少なかった電力経営に焦点をあてたことである。 電力経営に関しては、従来の地域独占(自然独占)にかえて競争メカニズムの導入(規制綬和、自由化)をめざした改革が進行中である。だがロシアの特殊的事情として電力危機克服のための電力改革という要因が存在する。周知のようにロシアの電力部門では、半数以上の設備が老朽化しておりこの設備の更新が焦眉の課題である。しかしながら、設備更新に必要な資金が不足しており、このままでは数年後に電力危機が発生する。そこで、電力部門を自由化することによって、国内外の民間資金を電力部門に引きつけ設備更新を行い危機を回避するということが、ロシアの電力改革の主目的である。従ってロシアの場合、電力会社が発電と送電の分離を支持し、他方地方政府や需要家の側から、電力の安定供給を守るために垂直統合(発・送・配電の一貫方式)の維持が支持されている。 次に極東における電力改革の状況を見ると、ヨーロッパロシア地域とは様相が大きく異なる.豊富なポテンシャルを持ちながら、現時点ではロシアにおいて最も電力供給が不安定な極東地域では、発電と送電の分離が不可能であり、2006年までは現状の垂直統合が維持される。従って、ロシア極東の安定化を検討するためにはガス化の進捗状況とともに電力改革の動向を今後とも注意深く見守る必要がある。
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