研究概要 |
日本経済のさらなる発展にとっては次世代産業を育成することが必要であり、この担い手となるハイテクベンチャーの創出が不可欠であるが、最先端の高度な技術を活用した事業を起こすことのできる組織は、現在の日本では既存企業における新事業開発と大学発ベンチャーである。 企業における新事業開発のマネジメントについては、先ずは既存事業の成長時に得た成功体験を棄却することが求められる。これまでの日本企業にあって、社内ベンチャーあるいは新事業の立ち上げ時に最大の障害となってきたのは既存事業による干渉である。加えて、近年の企業を取り巻く経営環境は、20世紀後半の日本企業が成功した時代環境とは様相を異にする。現在の環境下で新事業の開発に成功するには、製造業であれば、(1)経営スピードの実現(2)素材、機械設備、人材の融合、(3)グローバルニッチ市場の探求、(4)新たな事業モデルの構築、という4つの要因がカギを握っていることが事例研究を通して判明した。また、製造業に限らず小売業やサービス業においても、企業の存続や成長には、たとえ同じ事業を継続するのであっても、事業の仕組みづくりの革新が求められることが中堅企業の事例から明らかとなった。 一方、大学発ベンチャーについては、文科省ならびに経済産業省の積極的な政策的支援が功を奏して、大学発ベンチャー1,000社という目標自体には達成の目途が立った。しかしながら、個々の企業をみたときには、事業としての規模やマネジメント体制には未だ多くの課題を残しており、安定した経営状態にある大学発ベンチャーはきわめて少数であり、大学発のベンチャーから有望な新産業が育つまでには至っていない。
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