研究概要 |
本年度は,昨年度の成果を引き継ぎつつ,クラスター形成の初期段階におけるキー・プレーヤーの活動やそのネットワークの変化に焦点を置いた新規およびフォローアップのインタビュー調査と,国際比較を実施するための海外フィールド調査を実施した. 国内においては,香川県における糖質バイオクラスター構想(希少糖研究を中核とする)に関与する研究者,企業・行政関係者に対する追跡調査を続行するとともに,国際希少糖学会の会員に対して各国における希少糖研究およびその産業化の動向に関する調査を行い,希少糖研究を取り巻く研究者のネットワークと,香川県における糖質バイオクラスターの発展の可能性と課題について検討した。また,国内における比較対照事例として,北海道や徳島県等におけるバイオ産業クラスターの事例研究や立地データを用いた分析を行った.海外調査では,イギリスおよびアメリカにおいてバイオ産業クラスター内における大学の研究者や企業に対するフィールド調査を実施した. これらの研究の結果から,国内においては,研究とビジネスの間のリンケージや地域に根ざすこととグローバルな競争優位を構築することの両立の困難さに直面し,それらの困難を乗り越えようとしているクラスターの初期過程の実像が明らかとなった.海外事例調査からは,研究とビジネスのリンケージをはかることのできる人材の育成や成長段階に応じた支援体制の構築が重要であることが確認できた.特に,NPOや各種組織がこうした機能を分業して支援するとともに,クラスター内だけでなくグローバルに適切なプレーヤーとの連携を図ろうとしている現状が明らかとなった.こうした結果から,初期過程においては,地域における産学連携を支援する上でのマネジメント機能の強化をはかっていく必要があり,そのためには,教育および産学連携支援において大学機関の果たす役割の大きさを指摘することができるだろう. 以上の成果の一部は,ワーキングペーパーとして刊行済みであり,組織学会・研究発表大会(2005年6月)において報告予定(受理済み)である.また,一連の研究成果をもとに,成果報告書を刊行予定である.
|