先端的な技術開発によるベンチャー創出のみならず、生産におけるエンジニアリング技術を改良精緻化するプロセスは地域企業の戦略行動としては極めて重要である。新規事業や既存事業において、技術をビジネスに結びつけるマネジメント(技術経営MOT)による事業創出の重要性は指摘されながらも、その実態については未知の部分がおおく、ましてグローバル化する経済の中で、このマネジメントがどのように展開されているかについては殆ど知られていない。研究では、海外進出企業への聞き取り調査と郵送質問調査を通じて、海外事業を統治する仕組み(ガバナンス構造)と現地子会社を現地の環境から遮断する仕組み(カプセル効果)が重要であること、このマネジメントが出来ているばあい、技術をテコに海外市場を開発する戦略が自律的に展開され、ボランティア・アクションが連続的に展開するというマネジメントが展開されうることが明らかになった。また、新規事業開発というベンチャー的な試みには、これまでの企業戦略を通じて蓄積されてきた技術・市場コンテンツ(ローカルな資源コンテンツ)が重要な意味をもっており、この蓄積と展開能力が新規事業を成功に結びつくことを明らかにできた。これらは経営資源ベースの経営戦略論およびアクション指向の創発型マネジメント論の提唱に貢献する知見になりうると考える。
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