本研究は、日本企業のグローバルな戦略行動と技術経営をアジアの企業と相対化して捉え、その実態を海外子会社の展開を通じて明らかにしようとするものであった。日本の有力企業およびベンチャー・中堅中小企業の海外子会社のマネジメントをガバナンス、カプセル化をキーワードに分析し、同時に海外子会社の技術マネジメントを明らかにし、グローバル時代における日本企業の競争優位を考察した。 研究活動ではドイツのSteinbeis大学大学院での研究発表、中国浙江大学の国際シンポジウムでの招待発表などとともに、MOT関連のシンポジウムやアジアとのビジネス連携を探るセミナーでの発表の機会をえた。また、仮説を検証すべく実施した調査(面接調査、アンケート調査)を行うことができ、その成果を取り込んだ研究発表の機会を現在検討している。さらに本研究の過程で知己を得た中国東北大学(瀋陽)劉積仁副学長を通じ、同副学長が創業した「東軟集団」の10年史の翻訳に取り組むことができた。現在、出版を目指して翻訳文を校正しているところである。 東軟集団は、独創的な技術開発を中国企業自らが取り組んだ稀有な例であり、しかも大学初ベンチャーの典型的な成功事例でもある。中国政府の進める東北開発のモデル企業として中国国内で注目を集めているが、日本では殆ど知られていない企業である。このような企業の翻訳は単なる国内への紹介になるだけでなく、技術をベースにした大学発ベンチャーのケースとしても意義があると思われる。このことも大きな成果であった。
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