研究課題
基盤研究(C)
この研究は、創造的中小企業としての創造法認定企業5437社(2000年10月時点)を対象とした郵送質問票調査で回答を得た1365社(有効回答率:25.1%)に対し、経営戦略とガバナンスが成果に影響を及ぼすという視角のもとで分析を行う。2002年12月から2003年1月に新たな質問項目を加えて再度詳細な郵送質問票調査を実施し、その後の追加調査によって301社から回答を得た(有効回答率:22.1%)。これらのデータをもとにデータベースを構築して比較分析を試みた。研究課題の分析結果からは、創造的中小企業は全体的には企業家的トップマネジメントを中核として戦略を決定し、ドメインの重視、全体最適な資源蓄積、独自性・先駆性を重視した新製品開発などの特徴をもった積極的な事業活動を展開しているが、家族志向型ガバナンスは探索型戦略に影響を及ぼさないこと、競争優位性の高い企業ほど探索型戦略をとる傾向があること、トップがビジョナリー行動をとるほど探索型戦略をとる傾向があること、探索型戦略をとる企業ほど成果が高いことなどが明らかになった。301社の二時点におけるデータを対象とした分析では、内的および外的なモニタリング活動は戦略および組織の一貫したパターンとイノベーションとの関係を媒介しうること、イノベーションは内的および外的なモニタリング活動と経営成果との関係を媒介しうること、内的および外的なモニタリング活動は経営成果と戦略および組織の一貫したパターンとの関係を媒介しうることが明らかになった。また、大企業からスピンアウトした研究開発型中小企業の事例分析では、資金や人的資源獲得に困難が大きいという実態が認められた。さらに、301社とBen Franklin Technology Partnersプログラムの認定企業118社とを対象とした日米比較分析の結果では、家族経営企業と非家族経営企業で戦略に大きな違いはないが、トップマネジメントのビジョナリー行動は日本企業の方が顕著であること、日米の創業者と後継者の経営する企業はともに後継者企業での家族の出資比率が極めて高いこと、日本企業が創業者経営企業と後継者経営企業の間で戦略とトップマネジメント特性に統計的に有意な違いがあるのに対してアメリカ企業では顕著な違いはないこと、日米の高業績企業は全体として探索型戦略をとるが、目本企業はより探索的で多様な技術蓄積とコスト優位性を武器とするのに対してアメリカ企業はニッチ戦略を徹底しようとすること、高業績企業におけるトップマネジメントは、日本企業では創発性を鼓舞しようとするビジョナリー行動が特徴的であるのに対し、アメリカ企業では業界知識をもとに分析重視であること、などの新たな知見が得られた。
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上智経済論集 49・1・2
ページ: 143-156
Proceedings of the 2004 Academy of Management Annual Meeting in New Orleans No.1
ページ: 1-28
Economic Research Society of Sophia University, Discussion Paper Series No.33
ページ: 1-20
Sophia Economic Review Vol.49, No.1・2
Proceedings of the 2004 Academy of Management Annual Meeting in New Orleans August