平成15年度は、内外の企業倫理および企業と社会の理論に関する文献を収集し、「倫理的行動」の意味する内容について、文献において確認した。ここでの倫理的行動というのは、事業活動とは別に行なわれる社会貢献活動やメセナを単に意味するものではなく、事業活動に内在するものも含まれる。それは、法律や政令、規制などを遵守するというコンプライアンスを単に指すものではなく、「正義」や「人間性」のような価値理念に基づいた行動である。そこには、バリアフリーに向けた活動やユニバーサルデザインの製品開発なども含まれる。しかし、日本国内における文献においては、「倫理的行動」は、企業倫理に基づく行動や「コンプライアンス経営」のように理解されていることが多い。 一方、反倫理的行動は、国内では「不祥事」として発覚するものであるが、社会の変化を認識することなく、従来の行動を続けた結果として、反倫理的行動と理解されるものがあることが確認された。すなわち、総会屋への利益供与、セクシャル・ハラスメントなどの反倫理的行動は、法令が強化されたり、新たに防止義務が企業に課せられたりする前は、「当たり前」のようにさえ見なされていていたのである。倫理的行動を実現するためには、社会の変化に敏感に対応することが求められることになる。 倫理的行動は、企業に対して信頼や名声などをもたらすことになる。アメリカには、火災により主力工場を失った企業に対して、利害関係者からの多大な支援が行われた事例がある。社会がその企業の従来からの倫理的行動を評価し、支援したのである。日本においても、企業脅迫事件に巻き込まれた企業や集団食中毒事件を起こした企業の工場に対して社会が支援した事例があることが確認された。 倫理的行動を促すためにコーポレート・ガバナンス改革が行われている事例もある。社外取締役に企業倫理を担当させることが行われていることが確認できた。
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