日本型の研究開発専門職のキャリア志向性 研究開発専門職のキャリア志向性の先行研究は、「マネジリアル志向」と「テクニカル志向」に分類されてきた。しかし、本研究では、これら従来の概念と大きな齟齬が発見できた。テクニカル志向は、リサーチ志向とエンジニアリング志向に二分できる。日本の研究開発職は、リサーチとエンジニアリングの距離が大きく離れたリニアモデルを想定する傾向がある。リサーチはかなり基礎研究よりで、エンジニアリングは極端に事業化よりである。さらに、「マネジリアル志向」という定義は、日本にはそぐわない。マネジリアル・ラダーとして用意されているプロジェクト・マネージャー(課長)は、研究開発の経験を経たミドルエイジが登るポジションである。したがて、欧米のように、若年からプロジェクト・マネージャーの卵として養成されることはない。ミドルエイジに達して結果的に、マネジリアル志向になる者も存在するだけのことなので、日本にあった新しい概念として「オーガイナイズ志向」を導出した。「オーガイナイズ志向」は、「リサーチからエンジニアリングの架け橋となるべく、チームが創出した知識を製品や技術の具現化に結びつけることによって組織化に貢献しようとする志向」と定義できる。 日本版MOTプログラムの現状とキャリア志向性 欧米のMOTスクールの視察をし、日本のスクールとの比較を行った。欧米のスクールの卒業後のキャリアは、プロジェクト・マネージャーと起業家を想定している。ところが、先に指摘したように、日本企業では、プロジェクト・マネージャーは、マネジメントのプロフェッショナルという位置づけではなく、研究開発の経験を積んだ人材が登れるものなので、MOT教育で学んだスキルがすぐに生かされることが難しい。また、起業家のキャリアも、起業環境が厳しいので難しく、キャリア志向性との対応を議論する必要があるだろう。
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