本研究は、EMSやセル生産方式などのエレクトロニクス産業における生産システムの新たな展開を「非統合型ビジネスモデル」として特徴づけ、パーソナルコンピュータ産業を例として、具体的にその展開過程と現状を解明し、その編成原理、存立基盤を明らかにした上で、20世紀における生産体制の発展において、それがどのような歴史的にあるのかを解明した。非統合型ビジネスモデルとは、OBM企業が多くの製造部門をアウトソーシングし、自社内で生産する製造機能を極めて短時間でモジュールを基礎に多様な製品に組み上げる最終組立に限定した上で、その組立工程に多品種生産を可能とするセル生産方式を導入し、その組立工場の近隣してサプライヤを組織して、サプライチェーンを通過するリードタイム、さらには自社におけるリードタイムを最小化する方式である。このビジネスモデルは、規模や範囲の経済性の失効や大量生産体制の終焉を即座に示すものではなく、統合型ビジネスの分化・非統合化と再統合による再編成を通じた、大量生産体制の進化の一局面であり、大量生産体制における柔軟化を通じた進化の一局面として捉えることができるのである。同時にこうした生産システムの新たな展開は、市場の変動により一層柔軟に対応できる高度な生産の統御能力を獲得していくひとつのプロセスとして位置づけられる。EMSがひとつの独立した産業として成り立つのはまさに企業における非統合化と部品・コンポーネントが細分化された社会的分業の下で生産されていることを前提としてである。まさに、現代の大量生産体制は、今日注目されている非統合型ビジネスモデルの背後にあって、またそれを前提としてより柔軟な体制として進化していっているといえるのである。
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