この研究の目的は、日本製造企業に適する企業再生戦略を見出し、検証することである。そのために日本企業の外部環境、特に雇用、社会環境が似ているドイツと韓国企業の再生戦略も研究する。また、同時に、過去の研究が多い米国企業の再生戦略も検討する。 今年度は、今までに集めたデータ(有価証券報告書、アニュアル・レポート、記事等)の分析に努めた。(今年度も各国の最新のデータを収集した。特に韓国企業のデータ収集に努めた。) 欧米企業の再生戦略の研究で問題になっているのは、リトレンチメントの有効性である。有効な再生戦略は、大きく分けて、3つのステップがあると一部の研究者が主張している。業績不振に陥ったら、(ステップ1)、リトレンチメント(コスト(例:営業費、人件費、利子等)・アセット(例:建物、土地、工場、在庫等)削減);(ステップ2)、安定化し;(ステップ3)、リカバリー(回復)するというのである。このステップの中で、一番大事なのは第1ステップのリトレンチメントである。その反面、他の研究者は、リトレンチメントの重要性を否定している。 まずは、業績不振に陥った日本企業にとって、リトレンチメント行動が企業再生に重要なステップであるか、を今まで構築したデータを用いて検証した。その結果、日本企業にとってもリトレンチメントは、企業再生に重要と判明した。業績不振に陥った日本企業は、まずリトレンチすることによって、再生のチャンスが高まるのである。この研究は、日本化学企業をサンプルとしている。論文は、「立教経済学研究」に2006年3月出版した。 さらに、他の産業でも、このFindingsが適用されるのかを研究するために、データを収集している。現在進行中の研究は電気産業内企業の再生戦略である。他の日本産業のデータも(また、米独韓企業のデータも)、将来分析する予定である。
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