研究課題/領域番号 |
15530272
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経営学
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小林 俊治 早稲田大学, 商学学術院・商学部, 教授 (00063701)
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研究分担者 |
田中 宏司 立教大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50350301)
山口 善昭 東京富士大学, 経営学部, 教授 (00200634)
潜道 文子 湘南短期大学, 商経学科, 助教授 (60277754)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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キーワード | 企業倫理 / 江戸時代 / ダイバーシティ / カント / ステークホルダー |
研究概要 |
本年度は、まず、日本的企業倫理を再定義するために、日本の近世におけるビジネスの発展を研究した。そのために日本商業史の研究を黒曜石が通貨的役割を果たしたとされる縄文時代からはじめ、次に弥生、古墳、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、織豊、江戸までのそれぞれの時代のビジネス実践と理念、倫理を研究した。とくに士農工商の身分社会にあって、商業が蔑視されながらも、豪商や堅実な小規模商人がかなりの数出現し、独自の社会的機能を果たし始めた江戸時代に焦点を当てて研究をした。大商人は、次第に困窮していく武士階級にたいして、社会の発展に寄与するようになった。すなわち、経済権力をもちはじめたのである。そして、江戸時代においては、商人の社会的存在を肯定する、鈴木正三とか石田梅岩のような禅僧や思想家が出現し、武士や農民と同じように、社会の交換システムをになう商人の社会的意義を説くようになった。 そして、商人もそのビジネスを成功するためには、武士道とおなじように、商人道を極めることが必要になった。そのさい、儒教倫理が、武士とおなじように、商人の場合も重視された。主人に対する忠誠や親孝行、正直などの徳目が重視され、家訓などにかかげられるようになった。おそらく日本の経営の特徴のひとつである、家族主義的経営の源流は、この江戸時代にあるといえるであろう。そこでは、商売の面ばかりでなく、日常の町人同士の相互交流においても、倫理的な行動が賞賛され、反倫理的行動は社会から厳しい批判を浴びせられた。通常、武家においても、商家においても、確固たる権威をもつ家長がおり、一族を統制すると同時に保護もするという2重の役割を果たした。 この江戸時代の儒教倫理に基づく企業倫理は、今日のように拝金主義的な社会に対抗する有益な倫理であり、より根源的に研究する必要があると認識した。また、今後の企業倫理においては、単に株主を重視するだけでなく、状況依存的(コンティンジェント)にその場で一番ケアすべきステークホルダーを重視すべきである。
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