平成15年度は、金融サービス業に属する東証一部上場企業を対象に、平成13年から平成15年までについてデータベース化を図った。まず日経TELECOMを利用し、各企業について、決算報告、新製品発売、役員交代などの記事を除外し、戦略および組織の変革に関連のある記事のみを検索した。同時に、記事本文の分析を行い、各変革に関する分類と記述を行った。まずそれぞれ4つに分けられた「変革クラス」と「変革レベル」という2つの次元から、各変革を16のセルに分類するグリッドを作成した。 本研究では、その上で、データベースを用いたいくつかの実証分析を行った。まず、平成12年6月施行の出資法上限金利引下げに対応して、日本の金融サービス会社がどのような戦略変換を行ったかを分析した。その結果、規模が媒介効果を有しており、戦略革新の程度には差がみられた。規模の小さな会社の戦略革新はより漸進的なものとなった一方、規模の大きな会社の戦略革新は中小業者の買収など急進的となる傾向がみられた。 ついで、米国の共同研究者が構築したデータベースを用いて、米国の消業者金融サービス市場における規制強化が戦略および組織デザインの及ぼす影響を分析した。サブプライム層向けモーゲージ市場で規制強化の結果、高所得者に対する貸付には変化がみられなかったのに対して、低所得者に対する貸付は激減した。この研究成果については、平成15年12月に開催された消費者金融サービス研究学会の全国大会で報告した。 最後に、ヨーロッパの消費者信用市場が未発達な要因と背景について分析した。その結果、規制の厳しさ、金融機関のリスク回避性向、銀行間の協調体制、銀行の保護主義的態度、文化・宗教的背景など、成長阻害要因としてはさまざまなものが拳けられるが、最大のものは個人信用情報機関が未発達なことが判明した。
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