平成16年度は、金融サービス業に属する東証一部上場企業を対象に、平成15年から平成16年までについてデータベース化を図った。まず日経TELECOMを利用し、各企業について、決算報告、新製品発売、役員交代などの記事を除外し、戦略および組織の変革に関連のある記事のみを検索した。同時に、記事本文の分析を行い、各変革に関する分類と記述を行った。まずそれぞれ4つに分けられた「変革クラス」と「変革レベル」という2つの次元から、各変革を16のセルに分類するグリッドを作成した。 本研究では、その上で、データベースを用いたいくつかの実証分析を行った。まず、日本の消費者金融サービス会社のアジア諸国での活動の変化を「開発」と「活用」の2つに分類し、香港、韓国および台湾のいずれの国においても開発よりも活用タイプの変革が圧倒的に多きことを示した。さらに、その国独特のマクロ環境、市場環境、主要プレーヤーの状況、関連法律、インフラ、資金調達などが制約システムとして機能しるために、進出した国によって、現地企業とのアライアンスなど、ビジネス展開のタイプや方向性に違いがあることが示された。さらに、量的なデータでは、識別できない質的な要因を発見するために、日本の消費者金融サービスのアジア進出についてケーススタディを行った。 ついで、日本における個人の自己破産の特徴とその原因について実証的分析を試みた。単変量および多変量で分析を行った。その結果、自己破産の発生を説明する要因の中で最も大きな説明力を持つのは、減収というライフイベントであるということを示された。
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