本研究は、アンケート調査(2004年3月実施)とインタビュー調査(2004年8月〜12月)から構成されている。 アンケート調査は、『有力企業の社会貢献2003』(朝日新聞社)の調査対象企業と厚生労働省による「均等推進企業表彰」「ファミリーフレンドリー企業表彰」「障害者雇用優良事業所等の表彰」受賞企業の計980社、152社から回答を得た(回収率15.5%)。分析の結果、ジェンダーに配慮した雇用管理は進展が確認される一方、障害者雇用は、法的雇用率(1.8%)に満たない企業が多く、停滞傾向にある。ジェンダー・エクイティと障害者雇用に影響を与えていたのは、企業規模であり、規模が大きくなるほど、障害者雇用者率、女性の管理職率が高く、女性管理職率と女性障害者率は相関する傾向にあった。 インタビュー調査では、ジェンダー・エクイティへの配慮や障害者雇用について、企業の社会的責任や社会貢献の側面から捉えている企業が多く、多様な人材を雇用することをダイバーシティマネジメントと呼び積極的に導入しいる企業もあった。ジェンダー・エクイティが進展している企業文化の根底には、性別に無関係の能力主義による雇用管理の徹底があることも明らかにされた。障害者雇用は、人材募集や職場環境の整備といった点で、乗り越えるべき課題が数多くある。 今後、企業内のジェンダーのあり方や障害者雇用に影響を与える要因は、ダイバーシティの理解と実践、企業の社会的責任を明らかにする企業倫理のあり方、国の政策としてのワークフェアの方向性であり、さらに詳細な検討が行われる必要がある。 なおこれらの研究成果は、日本社会福祉学会第52回全国大会において研究協力者(中野純子)と共に報告した。報告タイトル「企業の社会的責任・社会貢献としての障害者雇用、ジェンダー・エクイティマネジメント」(斎藤、中野、伊藤)「障害者雇用を促進する企業倫理」(中野、斎藤、秋山)。
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