平成17年度は、それまでの調査結果を踏まえて、追加的に文献調査を行いながら、論文執筆を行った。英文論文(題名は、A Study on Tension between ERP and Japanese-Style Management)を執筆し、Asian Business and Management誌に投稿した。現在、レフェリーによる審査中である。 本研究は、日本的経営が情報技術とどのように整合性を持つかについて、基幹業務統合ソフトであるERPを取り上げて、企業インタビュー、文献調査などを中心に実証的に議論するものであった。結論は、IT革命は日本企業にさまざまな課題をもたらしている。日本企業の多くが、日本的な経営のメリットとITのメリットの二者択一を迫られており、各企業が独自のコンピタンスを明確にした上で、戦略的にERPなどの企業情報システムを活用していくべきであるということである。具体的には、以下のことが明らかになった。 1. ERPは基幹業務のデータを統合させることにより、業務の効率化を狙うものであるが、日本企業ではモジュール単位での導入が中心で、十分にメリットが享受されていない。 2.日本企業は本来、企業個別的な業務慣行に優れているため、ERPのメリットを享受しにくい。 3.日本企業の多くは、世界的に最もシェアの大きなSAP社のR3と呼ばれるERPソフトを導入しているが、このソフトはモジュール単位での導入には適さない。 今後の研究計画としては、日本の大手企業に対してアンケート調査を行い、分析データを加えた論文を執筆するとともに、いくつかの企業のケーススタディを行って、本を執筆することを検討している。また、国際学会で報告した際に交流が始まった台湾、香港、韓国などの海外の研究者とメールで意見交換を行っており、今後、これらの研究者と共同研究を行う予定である。
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