この研究の目的は、1.日本の賃金人事改革を知ること、2.同様に米国の賃金改革を知ること、3.両国の改革の位相を知ることであった。得られた知見は以下の通りである。 1.日本の改革の焦点は年功的処遇の改革にあった。すでに70-80年代の能力主義管理によってその弊害が部分的に処理されていたが、今時の改革は、パラダイムチェンジを伴った最終的処理であった。即ち、「職能」から「役割」への人事の中核概念のシフト、職能給から役割給への転換、定期昇給の極小化と役割等級に応じた賃率形成、成果評価とコンピテンシー評価の定着、成果評価における部門業績の取り込みがそれである。 2.米国の改革は、市場で決定される賃率を、組織の秩序としての賃率に組み替え人材の育成に資する制度を目指すことにあった。「職務」基準を「職能」的あるいは「役割」的に運用すること、そうした人事基準をperformance management(組織業績管理)から演繹することであった。 3.日本は「職能」から「役割」へ、米国は「職務」から「役割」への収斂傾向が観察できる。この収斂を促したのは日米ともに組織業績管理の重要性であった。改革の内実は、日本が年功秩序との格闘であったのに対して、米国は市場原理を抑え組織原理をのばすことであった。 なお、この研究成果は『人事・賃金制度の国際比較-変化の中の日本とアメリカ-』(出版社未定)として2006年度中に公開する予定である。
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