研究概要 |
研究課題をさらに二つに細分し、二班に分かれて研究を進めた。第一の課題は、再生可能エネルギーの技術開発と公的な支援、あるいは科学技術政策の関連である。第二の課題は企業規模と技術開発の関係である。 第一の課題に関してまず考えなければならない問題に階層間の情報伝達システムがある。この情報伝達システムには政府や大学など最先端の科学知識を身につけた上位の階層から下位にある開発現場へのトップダウン的なシステムと、技術開発の現場に近い下位の階層から上位の階層に情報が伝達するボトムアップ型の伝達経路が区別できる。わが国における再生可能エネルギーの技術開発では、この両者が混在していることを戦前より戦後までの技術開発の展開過程の中に跡づけた。公的な技術支援や科学技術政策は多くの場合、トップダウン的な情報伝達経路を重視する傾向にあるが、必ずしも思わしい成果が得られていない。しかし現在注目されている日本型の生産システムはボトムアップ型の情報伝達を重視している。このような日本型生産システムの特徴を取り込むことで、わが国における再生可能エネルギーの技術革新にも新しい可能性が出てくると思われる。 第二の課題に関してはシュンペータ仮説の検討を中心に進めていった。シュンペーター仮説はイノベーションと企業規模に関するものと市場構造(ないし市場支配力)とに関するものの二つに定式化されるが、まずこれまでの実証研究をサーベイし,二つの仮説が一般的には支持されないことが明らかにした。また、この二つの仮説を実証的に検討していく上で「産業特性」,特に技術機会と技術の専有可能性が重要な役割を果たしていることが示された。そしてこれまでの研究成果を踏まえて,この分野の最近の展開としてクラスター論,「主要な技術」の発明における中小規模企業の役割の再評価,イノベーターのジレンマ,企業特殊的能力のなどを論じた。
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