従来の国際経営の研究では、あまり注目されてこなかった非製造企業のグローバル・オペレーションとマネジメントの適合性について、平成12年より分析調査を行っている。既に実施した日本の総合商社と海運企業の事例から、なぜこれらの日本企業のグローバル・オペレーションが、日本人と日本の本社を中心とする本国中心的な形態(エスノセントリック)によって行われてきたかに着目し、顧客適合性や言語適合性などの理由を解明してきた。さらに今回平成15年度から16年度までの科学研究費補助金による研究として、ビジネスの形態が極めて近似的と考えられる航空会社を対象として、外国航空会社と日本の航空会社の比較研究に取り組んでいる。 本研究では、日本の航空会社と外国航空会社の海外支店のマネジメントの配置を比較することにより、本国からの派遣者が現地でマネジメントを行うことの利点と制約を中心に、分析を進めている。航空会社の国際経営は、業界の特性から多国籍企業化(現地法人化)ではなく、支店組織のネットワークを基盤とする。本社の戦略を現地で遂行する組織形態、顧客である乗客の国籍、日本の航空会社のナショナル・フラッグ・キャリアの意識と海外における日本人の依存性などの複合的な要因が、日本の航空会社が日本人中心の組織を構築すること理由として考察された。 今年度は、外国航空会社の日本オフィスの代表者5名と日本の国際線航空会社(日本航空、全日空、日本貨物航空)の本社および米州支社においてインタビュー調査を行った。また昨年8月に多国籍企業研究会において、研究のフレームワークと研究の途中経過について報告を行った。 今後研究対象企業に対して、アンケート調査とインタビュー調査を継続して事実確認を行ったうえで、分析と理論的な構築を行う予定である。
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