今年度の研究実績として、まず台北市の調査実施が挙げられる。クルマ社会に突入した中において、1997年に開業した都市鉄道システムをはじめとするネットワーク形成が都市再生に成功したと評価される台湾の台北市の実態調査を実施した。台北では地下鉄・高架のこの鉄道システム以外に、一方通行道路のバス逆行レーン等を大胆に導入したバス専用レーンの活用等公共バスシステムの積極的な改善が行われている。 ここ近年、公共交通機関の整備、特にLRT導入により、都市再生とりわけ中心市街地活性化に積極的に取組んでいる欧米諸都市の事例は幅広く紹介されている。しかしアジア、とりわけ東南アジアについては、首都圏への一極集中が進んでいる中、自動車社会に突入し都市自体が交通混雑で機能マヒに陥っている状況が続き、解決が手詰まりと紹介されてきたが、新しい動きが見られる。台北における公共交通機関の整備と都市再生効果の相関について、調査の際入手した諸資料や聞き取りで得られた知見の分析作業が必要であるが、欧米諸都市の都市再生との対比で行いたい。 国内では岡山市や金沢市でのLRV(新型路面電車の車両)やコミュニティバス導入の実態調査を実施したので、その分析作業を行うことで知見が得られよう。岡山ではLRVの「モモ」が2年前に導入されたことの効果が大きい。金沢市では、「ふらっとバス」の路線が2路線となり、市民の足としてすっかり定着している。行政が実施した効果分析を援用して公共交通機関の整備と都市再生効果の相関に関する研究を深めて行きたい。
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