公共交通のバスやLRT(LIGHT RAIL TRANSIT、新型路面電車)の整備が都市再生にいかに効果があるか、効果をもたらすための条件にはどのようなものがあるかを、ヨーロッパ、アジアの事例研究と日本の地方自治体およびタウン・マネジメント機関の施策との対比検討で実証的に明らかにした。日本ではLRT導入で都市再生に積極的に取り組もうとしている富山市を重点的に調査研究した。西日本旅客鉄道株式会社は2003年2月、富山港線と岡山県の吉備線をLRT化する構想を明らかにした。同線はJR西日本から経営が切り離され、2006年4月29日から第3セクター富山ライトレール株式会社がLRTで運行を開始している。富山市では21世紀のまちづくりとして、LRT転換を起爆剤にしてコンパクト・シティ建設の構想をうちだした。JR富山港線のLRT化の意義は極めて大きいと考え現地調査を数回実施し、富山港線のLRT化の経緯と事業計画を把握した。その上で第3セクター・富山ライトレールの課題として、市民参画のまちづくりを原点に計画・運営両面で再構築が必要であると指摘した。日本で最初の本格的なLRT運行が、果たしてクルマ社会で中心市街地空洞化が顕著な富山市の都市再生の起爆剤となるかが、大いに注目される。 海外では、ドイツのカールスルーエやケルン等の実態調査および、韓国釜山とソウルの調査を実施した。ソウルの清渓川復興計画とバス交通改革は都心再生に大きな効果があったことを確認した。ソウルの中央走行専用バスレーン実施と富山市でのLRT導入の、それぞれの施策がどれだけ都市再生に寄与するか、効果の定点観測と評価・課題提起が今後の研究課題と考える。
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