研究概要 |
1.監査ネットワークの全体像を構想するという作業に着手した。アメリカにおけるエンロンやワールドコムによる不正会計事件を考慮して,企業不正の防止および発見・摘発という観点から,監査ネットワークとコーポレート・ガバナンスとの関係について検討した。これに基づいて,コーポレート・ガバナンスをコアとした,監査ネットワーキングモデルを構築した。このモデルでは,公認会計士による財務諸表監査,内部監査ならびに監査役ないしは監査委員会監査相互間における情報交換と有機的な協力関係のあり方を示している。また,内部監査および監査役ないし監査委員会の構成員に関する人材養成の必要性を指摘した。 2.監査ネットワークの一角を占め,わが国で新たに導入された制度である監査委員会制度の役割と課題について,アメリカやフランスの動向を考慮しながら検討した。わが国における監査委員会は,伝統的な監査役制度との選択として採用されるものではあるが,コーポレート・ガバナンスに対してより直接的な貢献が期待されることを示した。その一方で,監査委員会による監査を実効あるものとするためには,財務諸表監査や内部監査などについての理解が必要であることから,監査委員会の構成員について,監査対象に関する専門的な知識・能力の養成が課題となるということを指摘した。 3.監査ネットワークの具体的な適用例として,ゴーイング・コンサーン問題への対応について分析した。財務諸表監査における公認会計士によるゴーイング・コンサーン問題への対応に際して,他の監査要素が協力するという観点はもちろん,監査ネットワークの機能によって,企業の経営破綻のリスクを軽減することが可能になるということを明らかにした。
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