研究概要 |
本年度は,コーポレート・ガバナンスならびに監査ネットワークにおいて中核に位置づけられ,かつ重要な役割を担う内部統制の機能を中心に研究を行った。 エンロンなどの不正会計事件を受けて制定された米国の『企業改革法』において,経営者による内部統制の評価報告書ならびに独立監査人によるその監査が制度化されている。また,フランスにおいてもほぼ同様の制度が設けられている。こうした制度の概要について明らかにした。さらには,わが国においても,有価証券報告書における虚偽記載が問題となり,内部統制のあり方ならびにその評価などについての基準作りが始まっている。本研究においても今後の重要なテーマであるとの認識から,これらの事項についての概要把握を行うとともに,今後の展開についての追跡に着手したところである。 内部統制の役割・機能との関係では,公認会計士による財務諸表監査における統制リスク(内部統制の有効性)の評価と監査自体の有効性との関係についても詳細な検討を行った。リスク・アプローチ監査においては,統制リスクの適切な評価が監査の有効性を決定的に左右することになる。リスク・アプローチ監査については,監査手続の合理化(効率化)による戦略性が強調されている。しかし,本研究では,経済学的な意味での効率性という視点から,監査資源の配分と監査の有効性の関係を重視すべきであるとの結論を得るに至った。 本研究の総仕上げとして,内部統制の評価ならびにその監査(検証)のあり方にかかわる研究を基礎に据えながら,コーポレート・ガバナンスの支援という観点から,内部監査および監査役ないし監査委員会による監査のかかわりを明らかにすること,さらにはこれらの監査結果を財務諸表監査にどのように活用するかを明らかにすることが必要であると考えている。
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