本研究は、今までの研究と異なり、財務諸表のデータではなく、アナリスト予想のデータから利益操作(利益調整)を検証しようとするものである。平成15年度は、研究環境の整備と共に研究補助者を雇用し、日本の経営者交代などのデータベースの作成を行った。また共同研究者との話し合いにより、予想誤差のさらなる分析を行う事よりも、米国の経営者交代のデータを3倍程度に増やすことにより、予備的な分析効果をさらに強固なものにしようということになり、研究方法の一部改変を行った。一方、内外の学会などでの情報収集および日本における筑波大学外での研究成果の発表により、現在の研究の大きな方向性が妥当であるという確証がえられた。 また、経営者交代のデータを集める中で、以下のような日本の経営者交代の特質があきらかになりつつある。ひとつは業績悪化などにより、経営者交代が行われていると考えられる場合でも、辞任に追い込まれるケースはあまり多くなく、会長などの役職にとどまる場合もある事である。従って、米国の分析事例のように取締役会にとどまるかどうかで、自発的・非自発的な交代を判別するのは妥当ではないと考えられる。もうひとつは日経新聞の記事から判断するに、社長の退任の際に、過去の業績を取り上げて「花道」をかざる慣例があるとみられることである。このような慣習に従って、「花道」を用意する場合には、その年の企業業績になんらかの調整が行われている可能性があり、今後の扮析を検討している。
|