本研究は、今までの研究と異なり、財務諸表のデータではなく、アナリスト予想のデータから利益操作(利益調整)を検証しようとするものである。 平成16年度は、日本企業のデータベースに関して、分析の際使用する株式投資収益率のデータが整備されていないため、その作成からはじめている。また、同時に日本企業におけるCEO交代のデータ集計を手作業にて開始し、ほぼ終了した。現在、鋭意分析を行っているところである。 また、本研究に関連する研究として、経営者予想に対する市場の信頼性の研究を進めている。この研究は、財務困窮度の違いに応じて、経営者の行動が変わってくる可能性について検証しようとするものである。財務困窮度が増し、倒産の確率が高まってくると、経営者はより楽観的な業績予想をする傾向があることが知られている。そのような経営者予想に対して、アナリスト予想はどのような影響を受けているのかを分析するものである。具体的には、経営者予想の前後のアナリスト予想のデータを用いて、経営者予想が事前のアナリスト予想に比べて高いとき、財務困窮度の度合いに応じて、アナリストの改訂が影響を受けるかどうかを見ている。実証結果は、財務困窮度が大きい企業の予想についてもアナリストの予想改訂は小さいとは言えず、予想とは違った結果になっている。この結果は、仮説を支持しないものの、アナリスト予想の合理性の観点からは大変興味深いものである。
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