2年の研究プロジェクトの1年目にあたる平成15年度は、電気、ガス、石油のエネルギー産業を対象として、期間別および産業別の規制環境の違いが、株価-利益関係にどのような影響をあたえているのかを検証した。検証結果は、日本経済国際共同研究センターのディスカッション・ペーパー(2003-CJ-89)としてまとめた。その要旨は以下の通りである。 第1に、エネルギー産業の利益のrelevanceは、産業政策の影響を受けている。しかし、近時の規制緩和、自由化の進展は、利益のrelevanceを低下させているわけではない。第2に、為替レートや原油輸入価格の変動は利益の質に影響をあたえており、その影響は、産業や期間によって異なっている。ただし、電力(ガス)の燃料費(原料費)調整制度が利益の質を高めるという証拠は、得られなかった。第3に、製造業と比べて利潤率が低い企業の利益の質は低く、料金規制産業の利益のrelevanceは、一般事業会社の収益性との相対比較で決められていることが判明した。 この論文は、必要な改訂を施したうえ、書物として公刊する予定である。 なお、2年目の16年度では、交通産業を対象に分析する予定である。
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