TDnetデータベース・サービスを利用して、新株予約権がストック・オプションとして監査役に付与されている場合の付与理由を調査し、取締役と異なる理由が述べられているか否か、述べられている場合には、その内容を検討した。その結果、監査役を取締役と区別して位置づけている会社と、同じ役員という範疇で捉えている会社のあることが明らかになった。監査役の独立性という観点からすれば、ストック・オプションを付与すべきではないが、監査役の位置づけが取締役と同じ役員の一員ということであれば、それは商法上の監査役の位置づけとは乖離するものの、わが国における監査役の運用上の位置づけからすると、必ずしも不自然な現象ではない。また、委員会等設置会社における監査委員会に所属する取締役についても、ストック・オプションが付与されれば、同様の独立性の問題が生じるものと考えられる。 日経225採用銘柄企業の場合も、経営破綻した企業の場合も、わが国では役員が保有株式数を減らしている事例は極めて限られていた。このことは、監査役とのインタビューで既に得られていた情報ではあったが、それを裏付けるものとなっている。役員が少なくとも在職中は取得した自社の株式を売却せず保有し続けるのであれば、付与されたストック・オプションの価値を付与日に測定する際に、そのような保有行動を計算に入れなければならない。ストック・オプションを行使することによって手にする株式が、事実上の譲渡制限付株式であるとするならば、その制約条件を反映させる必要がある。 以上の研究成果を、2004年11月にソウル(韓国)で開催されたアジア太平洋国際会計研究集会と、2005年3月に名古屋で開催されたフライブルク・名古屋合同セミナーで発表した。
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