研究概要 |
本研究の主たる目的は,(1)会計システムを1つの「制度」(institution)と見なしたうえで,近年の会計システム転換のプロセスを比較制度分析(comparative institutional analysis)の観点から分析すること,(2)進化経済学の諸成果に依拠しながら会計システムの変化や進歩を貫く固有の論理を明らかにすることの2つである。 本年度は,(1)政府機関・非営利組織の会計制度改革,(2)フランスを中心とするEU諸国における企業会計制度改革,(3)わが国における基準調和化の進展の3つを,主たる研究素材としてとりあげ,比較制度分析の観点から検討を行った。 政府機関・非営利組織の効率的運営にとって,会計制度改革は必要不可欠の前提である。現在,その改革は基本的に,公会計・非営利会計への企業会計方式の導入という方向で展開しつつある。それはどのような概念的基礎にもとづいているか,公会計・非営利組織に適用可能な企業会計方式は具体的にどのようなものかを,主としてアメリカの事例を通じて検討し,あわせてわが国への政策的示唆を筆者なりの観点から明らかにした。 2005年問題を目前に控えてEU諸国とりわけ大陸系諸国は,自国の企業会計制度の大掛かりな改革に取り組んでいる。会計基準の「収斂」(convergence)は,非英米圏諸国の会計に構造的変革のみならず,機能的変革をも,もたらそうとしている。この点において,大陸系諸国の諸経験は,わが国における会計制度改革にとって貴重な示唆を与えるものとなっている。本年度はフランスの事例を取り上げ,その特徴と問題点を明らかにした。 以上の研究成果の一部は,次頁に示すような雑誌論文等として発表した。
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