研究課題
基盤研究(C)
従来の会計学における実証研究の基礎概念であり、先進資本主義諸国の証券規制の根拠でもあった「効率的市場仮説」に関して、実験的環境下で、それが成立していると思われる価格形成現象がどのような条件が揃ったときに観察できるのかを確認することが最も基本的な課題であった。その具体的応用として、同一証券に対して複数の情報が市場に出回っているときに、それら情報を市場が適切に織り込むことができるか否かをまず検討した。実験環境として8人の被験者に同一証券に関する3つの情報を保有させる。ただし、1つは全員が保有し、残る二つは4人ずつが保有するという構図である。その結果、通常では市場はそうした複数の価格を適切に価格に反映することは少なく、おおむね、多数の市場参加者が保有する(この場合8人)情報に規定されるという実験結果が得られた。それでは、効率的市場仮説が予測するように、証券市場価格が複数の情報を適切に反映させるにはどのような条件が揃っていれば良いのかという点について、一つは、市場参加者の証券売買意思決定構造を機械的に単純化してしまえば、逆に情報を適切に反映する可能性があることを実験的に確認した。いわゆる「ゼロ・インテリジェント」取引者の存在である。いま一つは、そうした情報群のうちのどれかが真実かもしれないという情報を市場参加者に共有知識として与えるという条件である。そうすることによって、市場参加者は他人が保有している情報に敏感になり、他者の情報を読み取ろうと努力するようになる。そうすることによって、市場に出回っている情報は、より適切に証券価格形成に反映されるようになる。最も典型的な実験として、収束均衡価格を前もって8人の被験者の1人に与えておき、かつ、全員の共有知識として真実な情報が市場に出回っているという情報を与えておくと、8人の市場参加者が行う実験的取引の収束均衡価格は、共有知識がない場合に比べて有意に、真の均衡価格に近づくことが見出された。以上のことから、マクロ的会計政策に対する提言として、各国の証券規制機関は、圧倒的な信頼性を持って証券市場に情報提供することが求められており、代替的な情報の存在が多くなればなるほどに、均衡価格はイントリンシック価格から乖離する可能性が高くなる、と言える。
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組織科学 39(近刊)
Organizational Science Vol.39(forthcoming)
会計 166
ページ: 27-38
Zasshi Kaikei Vol.166, No.5
アメリカ不正会計とその分析(山地秀俊編著) 経済経営研究 叢書 63
ページ: 107-132
Analysis upon American Inappropriate Accounting RIEB(Hidetoshi Yamaji ed. )