研究概要 |
研究開発投資のコスト・ベネフィット分析は,プロジェクト毎に,ライフ期間中のインプットである研究開発資源投入額とアウトプットである成果を対比して分析するが,プロジェクトの採否の意思決定段階,プロジェクト実施途中段階,事後段階では,最終的な成果のみならず,中間的成果すなわち技術知識ストックの測定を行う.技術知識ストックについては,その成果が,売上増,販売数量の増加,コスト削減等である場合や特許化されてライセンス収益となる場合がある。ベネフィットの財務的測度による評価は,研究開発投資プロジェクトについて,そのプロジェクトライフ期間中のEVAの現在価値の総和ならびに将来キャッシュ・フローの現在価値の総和やオプション価値分析が利用されるので,各プロジェクトの将来のEVAあるいは将来生じるキャッシュ・フロー,資本コスト,プロジェクトライフ期間の予測などが重要な要素となる。技術知識ストックの非財務的測度による測定の指標として,特許権登録件数,査定率などの特許関連指標,研究開発従事者数などが利用される。特許権は,自社実施特許,他社実施許諾特許,防衛特許,未利用特許の形態に区別できるが,これらの相違はベネフィットの測定に影響を及ぼすので,企業の特許権の利用形態・未利用状況について,平成16年8月に特許権を保有する435社に質問票調査を行ない,17業種98社から有効回答を得た。特許の保有状況や利用状況の業種別・規模別状況,特許取得理由,研究所での研究開発プロジェクトの採否決定有無,未利用特許の発生理由などについて調査した。 コスト・ベネフィット分析の方法は,インプットである研究開発投資が基礎研究であるか,応用研究・開発研究の性格を有するかによって異なり,北米における日系企業と上海・香港・台湾等のアジア諸国における日系企業とでは,現地での研究開発の性格が異なるので,上海・香港・台湾の日系企業について平成17年2月に訪問調査と質問票調査を行っている。
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