研究概要 |
本研究では,研究開発投資プロジェクト毎に,プロジェクトライフ期問中のインプット→中間的成果→レアウトプットに至るイノベーションの連鎖プロセスを分析している。インプットは,イノベーション能力や新知識を創出する基礎研究投資,製品開発投資,製品製造プロセスのR&D投資であり,中間的成果はインプットをアウトプットに変換する技術知識ストックである。研究開発投資の成果は,特許売却収益,特許のライセンス収益,差別化製品の売上高,コスト削減額などである。近年,わが国の企業は米国企業と同様に,企業目標として企業価値を標榜する企業が多くなっている。企業価値を高める源泉として技術知識ストックの管理の重要性が認識されているので,技術知識ストックの評価も企業価値の測度とリンクした測度で測定される。研究開発投資プロジェクトの効率測定のためには,そのプロジェクトライフ期間中のEVAの現在価値の総和ならびに将来キャッシュ・フローの現在価値の総和が利用される。技術知識ストックは,非競合性,非専有可能性,不確実性が高い,市場性がないといった特性を有するので測定が難しいが,非財務的指標として,研究開発の提携,特許権登録件数,新薬の臨床試験やソフトウェアのベータ・テスト,進捗状況,ライセンス収入,特許切れ製品、研究開発従事者数などが用いられる。 技術知識ストックには特許化された技術と特許未取得技術があるが,昨年実施した研究開発活動ならびに特許に関する質問票調査の調査結果によると,特許の未利用率は企業規模の大きい企業の方が高いことが示唆された。大企業ではR&Dの多角化が進んでいることによる。
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