研究概要 |
コントロール・メカニズムは実に多様であるが、その最も簡単な方法は、経営者の行動がもたらす成果の分配ルールを契約内容に盛り込むことである。経営者報酬契約がその一例で、これは、株主の利害に沿う行動には報奨を供与し、株主の利害に反する行動にはペナルティーを科すインセンティブ・システムである。この目的を達するには、企業業績と経営者報酬を連動させるシステムを構築するのが有効であるが、残念ながら、日本企業の経営者報酬契約の内容が不透明であるために、その有効性が議論されることはあまり多くない。 本研究では,このような企業内部のコントロール・メカニズムがいかに有効に作用しているかを、得られる限りのデータを駆使して、検証することである。コントロールに際して、経営者の行動を事後に評価する情報システムの力をどうしても借りなければならないが、本研究は、その際に、会計情報がいかに重要な役割を果たしているかを明らかにしようとする。 従来の日本の会計研究は、投資意思決定情報の有用性という、財務会計の情報提供機能の側面にもっぱら注意を向けてきた。けれども、もう一方の分析視角としての財務会計の利害調整機能も会計学の重要な研究方向であることを忘れてはならない。本研究は、特にこの方向を重視して、経営者報酬契約がいかに利害調整メカニズムとして機能するかを検討するとともに、そのメカニズムにおいて、会計情報の事後活用が経営者行動にいかなる経済的影響を及ぼすかを考察した。
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