本研究では、デュポン火薬会社が設立した1903年から、Pieere S.du Pontが社長として活躍した1910年代において展開された管理会計機能、つまり意思決定会計と業績評価会計が投資利益率を軸として体系的に実施されていたことを検証する予定であるが、平成15年度には、20世紀初頭のデュポン火薬会社に関する一次資料を収集するために、Pennsylvania州Philadelphia市にある歴史図書館やDelaware州Wilmington市にある資料館、またデュポン火薬会社の管理会計実務が継承されたと考えられるGM社の資料館などを直接訪問し、資料収集を行なった。そして、そこで収集された資料を基にして、20世紀初頭のデュポン火薬会社における意思決定会計と業績評価会計の実態を各々一部明らかにした。具体的には、意思決定会計として、デュポン火薬会社で考案された割当予算システムが投資利益率を軸として展開され、割当予算マニュアルにしたがって各部門や各事業部に資金が割り当てられる状況を考察した。一方、業務評価会計として、営業予算が投資利益率を軸として製品の種類別および等級別に作成され、差異分析に基づく予算統制が展開されていた状況を検証した。しかし、まだ、意思決定会計と業績評価会計が投資利益率を軸として連動して展開されている実態や管理会計の全体像が十分に解明できていないので、国内外で収集した資料および平成16年度に収集を予定している資料を基にして、これを明らかにしたい。そして、20世紀初頭のデュポン火薬会社で展開された管理会計機能に関する研究成果の一部については、平成15年度には、日本会計研究学会第62回全国大会で報告を行ったが、最終的には、本研究の一部を著書としてまとめる予定である。
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