研究概要 |
本研究では、現今のモータリゼーション下、ならびに大店立地法下で、自ら足をもたない高齢者が買物(付随的に通院)でどのような困難を経験しているかを、実証的に明らかにすることが目的であった。 そのため、一人暮らしおよび夫婦のみの高齢者世帯に属す全国の高齢者を母集団とする、多段確率比例抽出法に基づく調査(全国12市町村)、および「距離」を統制可能な変数として扱うことの可能な、人口20万人未満の地域に関する同法に基づく調査(全国6市町)を、行った。いずれの調査からも、今日の状況下で少なくない高齢者が、日々の買物(後者では通院の問題をも含む)において困難を感,じている事実が、統計的に明らかになった。およそ2人に1人の高齢者が買物の行き帰りにおいて、3人に1人の高齢者が商店(街)到着後において、各種の困難を訴えている。 多様な要因が関係するが、買物の行き帰りにおいては、モータリゼーションならびに規制緩和路線下での大規模店の進出による商店(街)の衰退を通じて、商店(街)までの距離が生み出され、これが越えがたい「バリア」になっているという事実を、大きな要因として指摘しうる。近場での買物ができないため、週に何度も買物に行くことができず、そのために自ずと荷物の量が増える傾向にあり、これが高齢者の負担になっている。商店(街)到着後は、やはりそこでの移動が主に問題になる。大型店の店内は、高齢者には広すぎる上に体を休める場所がない。 06年の通常国会において、「まちづくり3法」に関わる法律改正案が通過したが、本研究では、そうした動きを踏まえつつ、各種機関に対する提言も行った。
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