研究概要 |
1970年代のアメリカにおいて、古代ギリシャ以来つづいてきた医療思想に、巨大な革命的変化が起こった。医師の専権体制が疑問視され、ともすれば医師の操作の客体とみなされてきた患者の、「自己決定権」、が主張されるにいたったからである。こうして、インフォームド・コンセントを基礎とする医師と患者との「共同の意思決定」が、徐々に制度化されていった。,本研究は、この「医療思想革命」の結果であるインフォームド・コンセントが、現実にどのように実施されているのかの実態調査を行い、それが21世紀に入って、さらにどのような発展をとげようとしているのかを、解明しようとするものである。そのため本年度は、ジョージタウン大学医学校付属病院(ワシントンDC)とニューヨーク子ども病院とにおいて実態調査を行った。その結果、特に子どもや知能発達障害者など、コミュニケーション能力に問題のあるケースについて、スライドや紙芝居などを用いて患者の理解を得る方法が開発されていることを確認した。そのために、医師や看護士など医療従事者のコミュニケーション能力の開発に努力している姿を、具体的に知ることができた。 このような医療思想革命を可能とした画期となっている大統領委員会の議事録が、サンフランシスコ州立大学に所蔵されていることを知り、本年度、急遽サンフランシスコで資料を調査し、すでに大統領委員会で、インフォームド・コンセントを実施するさいの具体的諸問題について、検討が重ねられていたことを、具体的に確認した。インフオームド・コンセントの制度化が、建前に終わっていないことを具体的に確認することができたということができる。
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