調査対象地域の地域教育行政における権限関係、中学校配置計画、高等学校統廃合の影響に関する聞き取り調査を、地域教育行政関係者および当該地域中学校長に対して実施した。当初の予想以上に、少子化が進展していること、高等学校進学時における進路選択について、当該地域では地域高校に過剰に依存しない傾向が存在していたことが知見として得られた。 また、石川県輪島市住民を対象として、高等学校の教育制度改革に関する意識調査を実施した。計画標本数400を、選挙人名簿を使用して確率比例二段抽出法を用いて抽出し(20〜75歳)、郵送法によって配票・回収を行った。有効回収数237で有効回収率は59.3%であった。同時に、都市部(石川県松任市)でも同じ調査枠での調査を実施し、地域間比較が可能な計量データを得た(回収率51.3%)。単純集計の結果はホームページ上に掲載し、調査対象者には別途フィードバックを行い、調査の意義を説明した。 データ分析の結果、以下のことが明らかとなった。(1)教育機会の格差の認知に大きな地域差が見られ、「感じる」とする者が、輪島市で23.7ポイントも多くなっていること、(2)地域に同等レベルの進学校があることを希望する度合いに地域差があり、「たいへん重要だ」とする者が輪島市で10ポイント多くなっていること、(3)一方、「特別な財政負担をしてでも、学校の統廃合をしなくて済むようにすべきだ」という意見への賛否については、地域差が見られず、「強い反対層」が逆に輪島市において若干多いこと。年齢やライフ・ステージ条件をコントロールする必要があるが、学校教育制度に対する過疎地のニーズが、当初の予想よりも複雑なものであることがわかった。
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