本研究において昨年度実施した住民意識調査(石川県輪島市住民400名を対象、確率比例二段無作為抽出法、郵送、回収率59.3%)、および比較対照調査(石川県旧松任市)についてデータ分析を進めた(昨年度の分析は単純集計の地域間比較にとどまっていた)。データ整備を行い、調査実施に関する情報を整理して、論文に著した。データ分析の主たる分析項目は、「特別の財政負担をしてでも、学校の統廃合をしなくてすむようにすべきだ」という意見への賛否(5肢尺度)であり、回答分布そのものに地域差は見られていない。相関分析の結果、以下の点が明らかとなった。第1:高校入試の学区制廃止に反対するほど、学校統廃合に賛成であった(相関係数0.134、以下同)、第2:個性重視教育や地域進学校を重視するほど学校統廃合に賛成であった(0.154、0.261)、第3:地方分権志向が高いほど学校統廃合に反対であった(0.171)、第4:政治的な伝統主義傾向が高いほど、また自由制限的平等主義傾向が高いほど、学校統廃合に反対であった(0.225、0.234)、第5:年齢・性別・教育年数・職業などの属性変数の効果は確認できなかった(以上、有意水準は5%を採用)。他方、比較対照としての都市では、教育機会格差の認知、公的制度・税利用への態度など関連する項目は少なく、輪島市においてと同様の関連を持つ項目は自由制限的平等主義だけであった。以上の分析結果からは、客観的な学校教育の利用機会の程度により、学校統廃合への賛否を規定する判断基準の様態が異なっている実態が推察される。 さらに、教育行政サイドへのインタビューおよび資料収集から、調査地域における社会統計的な少子化状況、学校数の変遷、高等学校再編整備計画の経緯について、データ収集を行った。また、地方出身者のライフコースの分析法に関する検討を行った。
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