研究概要 |
本年度は、理論的研究としては、欧米圏での「質的研究革命」以降の質的インタビュー調査の最新動向、具体的には、Denzin & Lincoln (eds.),Handbook of Qualitative Research (2000)やGubrium & Holstein (eds.),Handbook of Interview Research (2002)などの検討を行なった。検討を通して、相互行為論をベースにしつつ批判的で構築主義的な視点を組み込んだ研究が新しいアプローチとして有望であることを確認した。新展開を主導するDenzinの主張(相互行為論的カルチュラル・スタディーズの提起)については、特に包括的な検討を行ない、その研究成果を『社会学研究』誌上に発表した。 一方、経験的研究としては、次年度以降の本格調査に向けた準備作業として、農業者ネットワーク(福井県内)などについて予備調査(参与観察および聴き取り調査)を行なうとともに、農業・農村・農政に関する諸資料の収集と分析を行なった(直近数年間の『農業白書』、『農業と経済』誌、『日本農業新聞』、2000年農業センサス福井県および山形県版、および農林水産統計年報の分析など)。また、農民インタビュー調査の結果分析や比較分析に活用すべく、現代日本の日常生活において流布・通用する農業・農村をめぐる言説状況を探るために、各種新聞(『朝日新聞』、『福井新聞』、『日本農業新聞』)の直近1年分の投稿記事を収集・分析し、並存・競合する意味(常識的、ロマン主義的、支配的/対抗的イデオロギー等の語彙と論理)の布置を確認した。
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