2年目も引き続き、<アイヌ>を題材として取り扱っている小説類の収集にあたった。主として北海道立図書館や北海道文学館に所蔵されている北海道内の同人誌や市民文芸誌を検索した。道内で発行された主要なものと思われる雑誌のかなりのものに目を通し複写した。またこれも前年度に引き続き、作品の受容に関する副次的なデータとして、雑誌や新聞に掲載された作品紹介や同人誌評なども順次収集している。二つの作業を通して得られた資料はデータベースとして整理している。ただし、全国誌掲載分については作業があまり進展しておらず、来年度に向けての課題となる。2年目に新たに手がけはじめたことは、作品の受容に関する具体的な分析である。1950年代後半に出版され、その後も長く「名作」として読み継がれてきた二つの作品について、両作品が「名作」としての地位を確立させ、またその後評価が変化していく過程を、評論や読者の反応、映画化にともなう影響といった側面をふまえて解析を進めているところである。この作業を通して、昨年度課題としてあげた文学作品の社会学的分析に向けての方法や枠組みに一定の前進をもたらすことを期待している。 また、二つの作品のみならず、作品群のある程度の全体像をつかむため、データベース化した資料の分類や位置付けについての作業を来年度に向けての課題としたい。どのような作品がどの時期に発表され受容されたか、その変遷をたどりマッピングすることで、<アイヌ>文学作品を消費する側の社会意識に迫ることを構想している。
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