本研究は、「住民主導による教育システム・医療システムの構築」を通じた地域(コミュニティ)活性化に関して、研究者が当事者と共同的な実践を展開しながら研究しようとするものである。具体的には、(1)住民主導の教育システムづくりの実践として、大阪府寝屋川市で展開されている「寺子屋Neyagawa」の活動、(2)住民主導の医療システムづくりの実践として、京都市小野郷地区における「地域医療の拠点づくり」の活動をとりあげる。 (1)「寺子屋Neyagawa」(大阪府寝屋川市) 当事者とともに日常的な活動に携わりながら、(a)「寺子屋」に対する子どもと親のニーズや、参加の動機と経緯、(b)運営に携わる住民たちの参加の動機と経緯、および、活動に対する現状認識、(c)場所を提供している学校、および、教育委員会の「寺子屋」活動に対する反応を、時系列的に追尾した。それを通じて、子どもや親、運営に参加する住民、学校・教育委員会それぞれの規範がどのようにぶつかり、どのように変化していくかを検討した。また、教育の専門家として活動に参加する教師が、通常の学校教育とは異なる、住民主導の教育の中でいかなる役割を発揮すべきか、という点についても、教師のナラティブを分析することによって明らかにした。 (2)「地域医療の拠点づくり」(京都市小野郷地区) 小野郷における活動を、住民ボランティア、協力する医師、一般住民とともに推進しながら、その経緯と問題点を時系列的に追尾した。とくに、「地域のホームドクター」という理念が、どのようなプロセスをへて地域に浸透するかを検討した。伝統的な集合体の規範と、住民ボランティアに象徴される新しい規範がどのように相克してくのか、この点についても重点的に検討した。
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