研究概要 |
本研究の目的は、おもにコミュニケーション論ならびに相互作用論の視点から、夫と妻、親と未成人子、高齢の親と成人子、祖父母と孫、きょうだいどうし、などといった家族員間でおこなわれる日常的な交流状況(コミュニケーション場面)を社会学的に分析することにある。 初年度である平成15年度においては、家族コミュニケーションに関する文献研究をおこなった。わが国における家族コミュニケーションをあつかった既存研究を概観したが、最近では食卓の変遷による影響、テレビや携帯電話による影響などに関する研究が増加しているとは言え、その社会学的研究は依然として少ない現状にあった。また、とくに家族社会学では、もっぱら夫婦間や親子間の会話の頻度や内容がいかにその関係を反映しているのかに焦点をあてたものが大多数をしめていた。 いっぽう米国では、家族コミュニケーションに関する研究は活発である。たとえば、親と未成人子に関する理論と調査についてはソーチャ(Socha, T.J.)とスタンプ(Stamp, G.H.)が、高齢者と家族に関してはナスバーム(Nussbaum, J.F.)とカップランド(Coupland, J.)が、それぞれに体系的な研究をおこなってきており、多様で豊富な研究の積み重ねがあった。しかしながら、米国においてもメディアと家族関係との研究は盛んであるが、やはり住居空間や生活時間との関連の研究は少数であり、日常生活におけるモノをめぐる家族コミュニケーションの研究はあまり見られなかったのである。 本研究の特徴は、家族を取り巻くモノ(生活の装置)を分析の対象として含めているところにあるので、平成16年度以降の研究では、日本家族社会学会がおこなった全国家族調査のデータなどの量的データの分析で家族間のコミュニケーションの概況をとらえ、既存研究にはない質的データとして現代小説をテキストにした分析も加えながら、日常の家族生活のコミュニケーション場面を考察する予定である。
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