看護専門職養成における構造的課題について、養成課程の違いによる職業的社会化への影響から言及したが、本研究の段階においては、明確な要素抽出には至らなかった。しかし、養成課程から現実の医療現場で求められる資質や内容等に開きがあり、その開きが養成課程から仕事世界への移行としてうまく連動されていないことが指摘できた。 こうした原因には、ニート等の増加にみられる現代若者の職業意識なのか、伝統的な性別役割分業意識に根ざす女性性が関与する職業生活と私的生活の未分離からくる戸惑い、あるいは準専門職として看護職がおかれる半専門性がなす影響なのか、辞めるに辞められない、曖昧な精神構造や職業意識が明確化された事は、動かし難い事実であった。 また、インタビュー調査を進める中で、看護師の多くに達成感の衰退があることが著明に確認された。多くの職業において、達成感に充ち満ちてやりがい感を感じる職業はそう多くはないだろう。しかし、看護専門職業は専門性が高い職業として、あるいは高度専門職業として養成された専門職集団である。こうした専門職集団が、養成課程における修学内容と現場でのそれとのギャップから、達成感を失う状況が正常な状態か否かということは、今後十分な検討を行う必要があろう。 現実の労働形態、つまりは看護と介護の違いに苦悩する事例や職業を通じた自己成長に関係する将来展望が抱けないとする現実を散見すると、臨床現場でのジョブ・トレーニングや昇任・昇格等の労働・就労意欲を喚起・高揚するような就業継続・キャリアアップを支えるシステムが、看護労働現場には必要とされているのかも知れない。 今後の課題として、看護専門職養成課程は予期的職業的社会化期間とも言えるが、以後に続く職業生活確立期等の在り方などとも関係させ、養成課程における教育の違いが職業的社会化へどのような影響を及ぼすかについて検討する必要があることが示唆された。
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