本研究は、2つの地域(東北日本:6か村、中央日本:6か村)の宗門改帳を史料とし、徳川後期農民のライフコースを、人口学的指標から明らかにし、彼らのライフイベントが直系家族世帯形成にどのような影響を及ぼしているのかを見出し、2つの地域の共通点と各地域の独自性を明らかにし、直系家族形成のメカニズムを解明することを目的とした。しかし、実際には、東北日本4か村の分析に留まってしまった。その理由は、史料整理、史料批判、データペース作成に膨大な時間が費やされてしまったことが原因である。効率の良いデータベース作成を今後の課題としたい。本研究では、主に会津山間部4か村の史料を用いて分析を行なった。 観察の結果をまとめると、まず、世帯構成は、直系家族世帯に回帰するサイクルが見出され、それらを合計すると30%を超えることから、この地域に関しては、直系家族世帯を典型的な世帯構成だということが出来た。次に、個人を単位として、個人が経験した世帯構成を年齢階級別に観察すると、直系家族世帯の割合に波動がみいだせた。第3に、その波動は男女で異なる。第4は、それぞれの波の底をつく年齢階級は、上位世代と同居しているものの割合が、同居していないものの割合と逆転する時点である。 第5は、直系家族世帯の割合が底をつく年齢階級は、家族内の位座の移行期にあたっており、各波の底を経験した次の年齢階級で位座の移行がほぼ完了する。これらの観察からでは、地域類型が可能であるかどうかはわからない。本研究をおこない、研究は途中であるが、当初考えていたよりも世帯の形成メカニズムは、確固たるものがあるわけではないのではないかという作業仮説を構築するに至った。
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