本研究は、早稲田大学中央図書館所蔵の『大日本回教協会(1938年結成、1945年解散)寄託資料』の整理や分析を通じて、戦前の日本におけるイスラーム研究の再評価と戦後のイスラーム研究への貢献と研究自体の継続性について再評価を行うことを目的とした。 平成14年度までの早稲田大学特定課題研究助成による資料の分類整理と包括的なデータベース化の成果をうけて、「CD-ROM:早稲田大学図書館所蔵『大日本回教協会寄託資料目録』」を発行した。これは、当該資料利用者の増加を促進したが、利用が進むにつれて誤植や脱漏も発見され、一部について修正を施し改良したものを本研究によって再刊した。 さらに『大日本回教協会寄託資料』に掲載されている業務関係資料や手書き原稿などを材料として研究を進め、戦前の日本におけるイスラーム研究の再評価と、その戦後日本のイスラーム研究への貢献と研究継続性について次の2点をふまえて検討した。(1)戦前日本のイスラーム研究の成果を掲載しているイスラム研究機関の諸雑誌『回教圏』、『回教世界』、『回教事情』、『イスラム』に関する情報収集と研究テーマの分析、(2)大日本回教協会の組織構造やその変遷と事業活動の分析、である。 以上の分析から現時点では以下のような結論をえた。戦中期に盛んであった日本のイスラーム研究の遺産は、組織面で見ると戦後の研究体制に受け継がれたと見なすこともできる。一方、研究課題や研究活動は継承された部分もあるように思われるが、昭和20〜21年ごろの活動状況に不明な部分が残っており、更なる『大日本回教協会寄託資料』の分析を経て、再評価する必要がある。
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